ピロリ菌とは
ピロリ菌の害
ピロリ菌は胃炎、胃潰瘍、十二指腸潰瘍、胃癌などには密接な関係があります。
胃炎
ピロリ菌に感染するとほぼ100%の人に軽い胃炎をおこします。
軽いむかつきや、上腹部に痛みを感じる症状があらわれます。中には激痛を伴う急性胃粘膜病変が発症する人が数%います。
これは胃粘膜細胞に接着したピロリ菌に対して、炎症反応が起こるため胃炎が発症すると考えられています。
胃潰瘍、十二指腸潰瘍
ピロリ菌陽性者は胃潰瘍、十二指腸潰瘍を発生する頻度が高くなります。
ピロリ菌陽性者の2~5%に潰瘍がみられます。潰瘍患者では胃潰瘍で約90%、十二指腸潰瘍ではほぼ100%にピロリ菌が陽性といわれています。潰瘍のほとんどは薬剤治療で治りますが、ピロリ菌が陽性の場合は80%程度の高率で再発をおこします。
そのため除菌療法が勧められており、抗生剤を使用した除菌治療をおこなうと約90%の人でピロリ菌が陰性となり、胃潰瘍、十二指腸潰瘍の再発が抑えられます。
胃がん
疫学的な検討ではピロリ菌と胃がんには関係があることがわかっており、ピロリ菌陽性者は陰性者の6~22倍の頻度でがんを発症するといわれています。胃がんの発症はピロリ菌によって慢性胃炎化を生じ、その慢性胃炎に種々な発癌因子が更に加わって発症することが判ってきました。
また、ピロリ菌の感染率の高い地域では胃がんの死亡率が高いことがわかっています。ピロリ菌陽性者のうち胃がんが発症するのは0.5%以下ですが、胃がん患者からみた場合90%以上の人がピロリ菌陽性です。1994年にはWHOがピロリ菌を胃がんの発がん因子と指定しました。
ピロリ菌の感染について
母親からや親しい間柄で食べ物をシェアする、井戸水使用による食環境だった、など経口による感染と言われています。最近の知見では、ピロリ菌感染は幼少期、とくに未就学時期に感染が成立すると言われており、これは幼児期の胃の中は酸性が弱く、ピロリ菌が生きのびやすいためと考えられています。感染から15~20年ぐらいたってから何らかの症状が現れるとされます。かつては日本人の1950年代生まれ以前の人では4人中3人に感染しているとされましたが、現在の日本の衛生環境が整った状況では、この状況は大きく改善しています。
ピロリ菌の除菌について
現在では薬を1週間(胃酸分泌を抑える薬、抗生剤2種類)飲みつづけることで除菌されます。
堀胃腸外科ではピロリ菌感染陽性者に対して保険診療の改正以前より治療をおこなってきました。
途中で服用をやめたりすると、ピロリ菌が薬に対して耐性を持つようになり、次に除菌しようと思った時、薬が効かなくなる場合があります。必ず医師の指示通りに薬を服用しましょう。
除菌できたかどうかの判定は、薬の服用が終わってから6週間以上して呼気検査などで判断します。
現在除菌の成功率は約80~90%です。
まれに、服用中に下痢・軟便・皮膚湿疹・味覚異常・食欲不振・舌炎などがあります。
除菌に成功した後で、胸焼け(逆流性食道炎)が起きやすくなる場合があります。
関連リンク
ピロリ菌の検査
内視鏡(胃カメラ)を使用する検査方法
口か鼻から内視鏡を入れ、内視鏡的にピロリ菌感染が疑われる像を成しているか、そして胃壁の組織をわずかに切り取り、その中にピロリ菌がいるかいないかを調べます。
ピロリ菌が出すウレアーゼ(酵素)を試薬に反応させて感染の有無を判断します。切り取った組織に偶然菌数が少なかったら偽陰性になることもあります。
切り取った組織を顕微鏡で見て、菌の存在を直接確認します。摘まんだ場所に偶々菌が生息していなかた、菌の数が少なかった、などで偽陰性になることもあります。
切り取った組織の一部分を培養し、ピロリ菌の有無を確認します。培養に約1週間程度かかります。同時に、ピロリ菌が存在した場合、除菌に用いる薬剤に対する感受性検査を行っており、除菌成功率を高めています。
内視鏡検査を補完する検査
ピロリ菌は胃から腸を通過して便中に排泄されます。少量の便を採取して試薬と反応させピロリ菌の有無を調べられます。(反応時間約10分)薬を飲む必要がなく、安全・簡単な検査方法です。内視鏡所見ではピロリ菌陽性だが、粘膜培養法や生検法では陰性だったなど結果が乖離している場合に追加で検査する場合に用います。または内視鏡検査が出来ないなどで用います(この場合は自費診療となりますのでご相談ください)。
ピロリ菌の抗体の有無を血液・尿検査で調べます。ただし菌が体内から消えた後も抗体はしばらく残っているため、感染後除菌されていても陽性に出る場合もあります。内視鏡所見ではピロリ菌陽性だが、粘膜培養法や生検法では陰性だったなど結果が乖離している場合に追加で検査する場合に用います。または内視鏡検査が出来ないなどで用います(この場合は自費診療となりますのでご相談ください)。
治療後、ピロリ菌が除菌されたかどうかの検査です。
検査用の薬(標識尿素入り)を飲み20分間横になってから、呼気(吐く息)を検査します。呼気の中の標識された二酸化炭素の濃度を調べます。ピロリ菌は尿素から二酸化炭素を作るので、感染しているとその濃度が高くなります。
ピロリ菌除菌法について
ピロリ菌除菌については、ピロリ菌除菌療法(費用)のページをご覧下さい。
関連ページ
ピロリ菌除菌療法(費用)
ピロリ菌の除菌療法は、ヘリコバクターピロリ感染が証明された場合(採血、培養法、鏡検法など)、除菌療法は現行法では保険適応となりました。
ヘリコバクター・ピロリ菌の除菌療法の費用の一例(2018.8修正)
窓口でお支払いいただく一例をお示しいたします。
検査・試験名 | 費用(税抜) | 3割負担の場合 |
---|---|---|
ヘリコバクター・ピロリ菌培養検査 |
3,300円 |
990円 |
ヘリコバクター・ピロリ菌抗体検査 |
2,540円 |
760円 |
ヘリコバクター・ピロリ菌耐性試験 |
1,700円 |
510円 |
薬 | 数 | 費用(諸費用含む) | 3割負担の場合 |
---|---|---|---|
ボノサップパック400(733.8円) | 7シート | 6,380円 | 1,910円 |
ボノサップパック800(884.0円) | 7シート | 7,360円 | 2,210円 |
※1次除菌の場合、上記処方が一例となります。
※薬剤耐性菌である、薬剤アレルギーがある、何度か除菌が不成功であった、など患者様により薬の内容が変わることもあります(保険適応が認められない場合もあります)。一般的に、現行の保険診療では、3次除菌(1回目も2回目も不成功となった)以降は自費診療となりますのでご了承ください。
除菌後6週以降で除菌ができているかどうか呼気試験(UBT)で行います。
※なお、当院では粘膜機能の回復具合をペプシンノゲンI/II採血検査をお勧めしています。この検査項目は自費診療となっております。予約時にご説明いたします。
検査・試験名 | 費用(諸費用含む) | 3割負担の場合 |
---|---|---|
UBT呼気試験 |
4,940円 |
1,480円 |
※ペプシノゲンI/II検査 (採血) | 1,944円 | - |